#7-1 11月23日は柚子の日。その風味を楽しむ

11月23日は、柚子記念日。“いいふうみ”に語呂合わせして、制定されました。11月を迎えて黄色く色づき、旬を迎えています。
柚子が中国から日本に伝播されたのは、飛鳥時代から奈良時代の頃。1300年以上もの昔から、大切にされてきた樹木なのです。西日本と韓国の一部沿岸地域でしか採取されず、生産量・消費量では日本が世界一。ほかの柑橘にはない爽香に、海外でも料理やフレグランスの材料として人気があり、「YUZU」という言葉が通じるほど。そんな柚子の風味が持つ魅力を、国内外の香りに通じる調香師の堀田龍志氏にうかがいます。

――日本人にとってはおなじみの柚子ですが、日本ならではの樹木なんですね。アメリカでは、2022年の食トレンドトップ10に柚子が入ったそうです。

多くの有名なシェフやパティシエが、料理やお菓子の中に柚子を使っていますね。海外の方々にとっては、柚子の香りはとてもエキゾティックで、日本の印象と深く結びついているように思います。柚子が他の柑橘類と違う点は、なんといっても「独特の苦み」と「フルーティ感のある青さ」、そしてジャスミンを想起させるような「フローラルな甘さ」にあると思います。柚子の香りが初めてフレグランスの中に使用されたのは、確か1985年にフランスの老舗であるCaron(キャロン)社から発売された、「Le troisième homme “ル トワジエム オム(第3の男)”」という男性用フレグランスでした。

なぜ柚子が使われたのか。
この香りを創ったのは日本人女性調香師で、出身地が高知県だったことから、彼女は柚子の香りについてよく知っていて、新しい香り素材としてこのフレグランスを創る際に使われたのだろうと思います。当時の欧米では、柚子の認知度が低かったため話題になりました。

その後は現在に至るまで、多くのフレグランスの香りに取り入れられ、ヘア製品や芳香剤などの幅広い商品の香りの中にも使用されていますよね。いまでは、日本だけでなく海外でも愛される香りになったんではないでしょうか。

yohaku コラム 堀田氏が調香したYohakuの4つの香りのうち、MOON JAZZにも柚子を採用(トップノートに柚子、ラベンダー、ミドルノートにゼラニウム、ローズ、ジャスミン、ラストノートにトンカビーン、コーヒー)。ぬくもりのあるフローラルな香りとグルマン調(お菓子のような)の甘い香り、やや苦味のある柚子の香りをブレンドしたフローラルアンバーの香り。

――MOON JAZZ には、印象的に柚子が取り入れられています。MOON JAZZの開発コンセプトは「夜」でしたが、なぜ、夜というキーワードの香りの材料として柚子を選ばれたのでしょう?(開発についてのインタビューはこちら

柚子は、柑橘の香りでありながら、ジャスミンを想起させるようなフローラル感を持っていたり、独特の苦みがあって、どこか「大人っぽさ」を感じさせてくれる香りだと思うんですよね。また、柚子の香りには、「鎮静作用」があるとも言われています。したがって、「夜」をテーマに作った香りの中に、柚子の香りを忍ばせるのは面白いですし、理にかなうかなと思った次第です。

柚子以外にも和の柑橘類は色々ありますよね。最近、改めて興味を持っているのは、大分県などで採れる「カボス」や、徳島県などで採れる「スダチ」の香りですかね。ライムに共通するような、独特の青味のある特徴的な香りが面白いですね。

――冬至が近づき、夜が長くなってきています。冬至には柚子湯に入って邪気を払うのが江戸時代以降の慣わしですが、このMOON JAZZの夜の楽しみ方は?

香りをのんびり部屋で楽しむことですかね。トップノートに柚子を使ったといいましたが、ノートとは「揮発速度」のこと。揮発が早いもの、中間のもの、遅いものの順にトップノート、ミドルノート、ラストノートと言います。揮発していく順に香りが変わっていくので、その移り変わる香りを楽しんでいただければ。

yohaku アロマドーム より香りが楽しめる、おすすめ。アロマポットなど熱源を使うと、オイルは蒸気とともに揮発して、より香りが大きく広がります。アロマドーム(別売)と適量の水とアロマオイルをお好みで数的落とし、アロマドーム下段にティーライトキャンドルを灯します。蒸気とともに立ちのぼる香り、ゆらめく炎。部屋の電灯を消してしばしリラックスの時間を(火事と火傷にはお気をつけください!)

yohaku コラムオイルやミストを素早く吸収してゆっくりと揮発してくれるアロマストーン(別売り)も、インテリアとして楽しめます。贈り物にも。

Profile

Yohaku 堀田龍志 Tatsushi Horita

堀田龍志 Tatsushi Horita
1975年国内大手香料メーカー入社。1981-82年パフューマーとしてフランス、ドイツ、アメリカなどで研修、1994年海外大手メーカーの日本支社に転職。1998年資生堂研究所香料研究室入所。香料研究室の室長や主任調香師として香りの開発に従事。2017年4月日本香堂入社。現在まで研究室に在籍し各種製品用の香料開発を担当。フランス調香師会正会員、公益社団法人日本アロマ環境協会顧問、日本調香技術普及協会名誉理事を務める。

インタビュー・文: 柳澤智子(柳に風)
撮影:水崎浩志(ループフォトクリエイティブ)
場所:和多屋別荘