#6 香りの奥深さと可能性を体験できる場所

「Yohaku Lab創香室」

(佐賀嬉野)
ライン

「Yohaku」は、香りが持つ奥深さと意外な可能性を体験していただく場として、「Yohaku Lab創香室」を設けました。場所は、佐賀県嬉野温泉にある旅館「和多屋別荘」内。 透け感のある純白の帷。うっすらと垣間見えるなかの様子に興味が誘われ、秘密の研究室のような佇まいです。 ここでは、調香師である堀田龍志氏を中心に、Yohakuの軸となる4つのアロマオイルと粉末原料の組み合わせを実験的に楽しんでいただけます。
yohaku labo室内

yohaku コラム_三服 yohaku labo入口 旅館「和多屋別荘」内にある、「お茶」「暮らし」「旅」などさまざまなテーマに合わせた1万冊もの本がお茶を飲みながら自由に閲覧・購入できる「三服」。茶箱を本棚がわりにしているのは、お茶の名産地らしい遊び心。「Yohaku Lab創香室」は、この「三服」の一角にあります。

yohaku labo 心から香りに寄り添って感じてほしいという思いも込め創香室内では、香りを嗅ぐではなく「聞く」と表現し、香りに通じた聞師(ききし)と一緒に、ワークショップをしていただきます。

「Yohaku Lab創香室」で体験していただけるのは、さまざまな香原料を混ぜ合わせてつくるフレグランスバッグ(匂い袋)のワークショップ。香原料ひとつひとつが持つ歴史、効能の話を聴きながら、ベースのレシピにのっとってブレンドしていただきます。香りは聞き師のアドバイスのもと、アレンジもお試しいただけます。お好みや気分に合わせて、原料の足し引きをして世界で一つだけのご自身のフレグランスバッグも創香いただけます。

卓上にずらりと並ぶのは、粉体の香原料9種類。 白檀、桂皮、安息香、丁子、甘松といった伝統的なものから、ラベンダー、和ハッカ、ヒノキや、珍しいところでは、茶どころの嬉野ならではの煎茶。それぞれの歴史や効能を聴くのも楽しみのひとつ。また、香原料は季節やイベントに合わせて、新しい原料や入れ替えなどの変化もお愉しみいただけます。

yohaku コラム

yohakuオイル 4つの香りについてのより詳しいエピソードは、こちらから[ sunrise、Monktree / HayesValley、MoonJazz

まず、軸となるのは、「Yohaku」のアイコンである4種のブレンドオイル(Sunrise / Monk Tree / Hayes Valley / Moon Jazz)。それぞれ、朝、昼間、夕方、夜をイメージして調香し、和ハッカ、ヒノキ、クスノキ、ユズといった日本の樹木や果実などの原料から採った精油もブレンドした、自然な香りが特徴です。
好きなオイルをひとつ選んだら、粉体の香原料をレシピ通りに乳鉢ですりあわせます。たとえば、和ハッカをベースにしたさわやかなSunriseの場合なら、白檀、桂皮、ラベンダー、和ハッカ、煎茶が組み合わせる香原料になります。

yohaku labo原料写真白檀はサンダルウッドともいわれる有名な香木。やさしい甘さで、古来から匂い袋にもよく使われます。桂皮(シナモン)の特徴は、スパイシーな甘さ。通常のミントよりもシャープなキレを持つ和ハッカ、フローラルなラベンダーを合わせて、最後に煎茶で青い爽やかさをプラス。

yohaku コラム 香りがたつようにすりつぶし、混ぜ合わせます。

yohaku labo原料写真 最後にオイルを数滴垂らし、自分好みの香りに仕上げます。

手順は簡単ですが、実は奥が深いこのレシピ。 というのも、調香師は普段は液体の香原料を扱うことが殆どで、粉体の香原料はあまり使いません。すでに完成しているオイルに、さらに違う要素を足すのは、蛇足にもなりかねません。香原料同士の相性や分量の正確さが問われ、知識がないとなかなかふさわしい着地ができないのです。

そこで、今回のレシピを開発した調香師の堀田龍志氏に、秘話を少しだけうかがいました。

yohaku 調香師 「Yohaku」のプロダクトすべてを調香。調香師として40年以上の経験があり、「Yohaku Lab創香室」オープンにあたり監修も担当。

「Yohakuの4つのオイルの開発時には、ひとつひとつにテーマがありましたよね。 Sunrizeなら、朝、ちょっと気温が上がり始めた森のような世界観を表現したい、とリクエストがあって、それなら和ハッカだな、ちょっとミモザを入れようか、と調香していくわけです。今回は、それとはまた別の香りの世界なんです。

白檀、桂皮、丁子、甘松、安息香などの伝統的なお香の材料とYohakuの世界観を、フレグランスバッグとしてマッチングさせないといけないんですよね。

レシピのポイントとしてはSunrizeオイルの重要なポイントであった和ハッカを、粉体の香原料のほうでも使ってみようと。さらに、嬉野ならではの煎茶「さえみどり」の清々しい香りを加えました。お茶の葉を香材料として使うのは、珍しいのではないでしょうか。嬉野のお茶農家さんより、お茶の加工途中で出荷できなくなった茶葉がある、と聞いたことから材料に取りいれさせていただきましたが、実に奥行きのある香りを持っています。入ると入らないでは、まったく違う。いい働きをしてくれました」

こうして、できあがったフレグランスバッグ。そこから漂う香りとバックストーリーは、鼻だけでなく、目も手も耳も楽しませてくれ、香りの世界の深淵を覗いていただくことができるのではないでしょうか。

残る3種のオイル(Monk Tree、 Hayes Valley 、 Moon Jazz)にも、開発秘話がありますが、こちらは「Yohaku Lab創香室」で、ぜひ。

構成・文: 柳澤智子(柳に風)
撮影:繁延あずさ